この記事にはアフィリエイトリンク(広告)を含みます。紹介料を受け取ることがありますが、価格や仕様は各メーカーの公式発表に基づいて書いています。
暖房器具を見に行ったら、空気清浄と扇風機を兼ねた電気式の1台3役モデルが目立つ場所に並んでいました。
気になってカタログを開いて、そこで手が止まりました。暖房の畳数が、どこにも書いていないのです。
石油ファンヒーターやエアコンには、木造〇畳・コンクリート〇畳と必ず書いてあります。調べてみると、電気ヒーターにだけ書いていないのには理由がありました。
- 電気ヒーターのカタログに暖房の畳数が無い理由
- 暖房能力(kW)で並べたときの、電気式・石油・エアコンの違い
- カタログに書いてある畳数が、暖房の畳数とは限らないこと
- 用途別に、どのタイプを選べばいいか
筆者はここで取り上げる製品を所有していません。各メーカーの公式仕様と公的機関の資料を読み比べて分かったことをまとめた記事です。使用感のレビューではありません。
先に結論:家庭用の電気ヒーターには「1.5kWの天井」がある
結論から書きます。家庭のコンセントに挿して使う電気ヒーターは、メーカーや価格にかかわらず、暖房の力がおおむね1.5kWで頭打ちになります。製品の出来不出来ではなく、差込口の定格が決めている上限です。
※「1.5kWの天井」は業界用語ではなく、この記事での呼び方です。
- 一般的なコンセントに挿す電気ヒーターの暖房能力は、おおむね1.2〜1.5kWで止まる
- 石油ファンヒーターは3.6〜5.65kW、エアコン(10畳用)は3.6kW
- つまり電気ヒーターは、リビングなどの居室を主暖房として担うには足りない
- 数畳の脱衣所や足元なら十分に役目を果たす。役割が違うだけ
だからといって電気ヒーターが悪い買い物だという話ではありません。主役として買うと期待外れになる、という向き不向きの話です。順に見ていきます。
カタログの「畳数」は、暖房の畳数とは限らない
まず、いちばん誤解しやすいところから。電気式の1台3役モデルにも畳数が書いてあることがありますが、それは暖房の畳数ではありません。
ダイソン Purifier Hot + Cool Gen1 HP10 の公式スペック
よく見かけるこのモデルで、公式サイトの仕様欄に載っている数字を並べます(2026年9月15日時点)。
- 温風モードの消費電力:1,400W
- 涼風モードの消費電力:最小2W・最大50W
- 適用床面積:8畳(30分)/25畳(60分)
- 暖房能力(kW):公式ページに記載なし
この8畳・25畳は、空気清浄として何分で部屋の空気を処理できるかを表した数字です。何畳の部屋を暖められるか、ではありません。
そして暖房能力(kW)の表記そのものが、公式仕様には見当たりません。載っているのは消費電力のW表記だけです。これは事実の指摘であって、製品の良し悪しの評価ではありません。
数字が2つ並んでいると、大きいほうを暖房の性能だと読んでしまいがちです。加湿器の適用床面積でも同じことが起きます(木造和室とプレハブ洋室で2つ書いてある)。その畳数が何の畳数なのかを、見出しごと確認してください。
暖房能力で横に並べてみる
では、他の暖房器具はどう書いてあるのか。各社の公式仕様から、暖房の力と適用畳数をそのまま拾って並べます。
| 種類・機種 | 暖房の力 | 消費電力 | 公式の暖房畳数 |
|---|---|---|---|
| 電気(1台3役) ダイソン HP10 | 記載なし | 1,400W(温風) | 記載なし (空気清浄は8畳) |
| 石油ファンヒーター コロナ FH-WZ3626BY | 暖房出力 3.60〜0.59kW | — | 木造10畳 コンクリート13畳 |
| 石油ファンヒーター コロナ FH-WZ5726BY | 暖房出力 5.65〜0.80kW | — | 木造15畳 コンクリート20畳 |
| エアコン パナソニック CS-224DFL | 暖房能力 2.2(0.4〜3.9)kW | 470W | 5〜6畳 |
| エアコン パナソニック CS-284DFL | 暖房能力 3.6(0.4〜4.7)kW | 870W | 8〜10畳 |
- 石油の「暖房出力」とエアコンの「暖房能力」は、測定条件の違う数字です。厳密に同じものさしではありません
- エアコンの暖房能力は、JISの定格条件(外気7℃・室内20℃)での値です。外気温が下がると能力も効率も落ち、霜取り運転中は暖房が止まります
- エアコンの畳数の目安は、断熱性能をほとんど考慮していない古い基準がもとになっています
- この表は電気代だけを後で比べます。灯油代は地域・時期で動くため含めていません。石油ファンヒーターも点火と送風に電気を使います
前提を差し引いても、ひとつはっきりしていることがあります。電気式だけが、比べるための数字を持っていない。石油もエアコンも、暖房の力と畳数を必ず書いています。
もうひとつ目を引くのがエアコンの行です。消費電力870Wで、暖房能力が3.6kW。使った電気の4倍以上の熱が出ています。電気ヒーターでは起こらないことです。
なぜ電気ヒーターは1.5kWで止まるのか
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。電気ヒーターの上限は、メーカーの手抜きではなく、家の電気の配り方で決まっています。
差込口と電源コードの定格が15A=1,500W
一般的なコンセントの差込口と、家電の電源コードは15Aが定格です。100Vとかけ算すると1,500W。メーカーはここを設計上の天井にしています。
電熱式は、入れた電気がそのまま熱になる
電気ストーブもセラミックファンヒーターもオイルヒーターも、電気を流して熱に変える(電熱・ジュール熱)仕組みです。投入した電力は最終的にほぼすべてが室内の熱になります。1,400Wを使えば、出る熱も約1.4kW。入れた分より多くは出せません。
1.5kWを超える電熱式の暖房機も存在します。蓄熱暖房機や電気式床暖房は単相200Vの専用回路で使い、1.7〜4.0kW級の製品があります。天井があるのは、あくまで普通のコンセントに挿して使う製品です。逆に言えば、市販の電気ヒーターが1,200W前後で止まっていることが多いなかで、1,400Wという数字は上限いっぱいということでもあります。
石油ファンヒーターがこの天井を越えられるのは、熱の元が電気ではなく灯油だからです。点火と送風にしか電気を使わないので、差込口の上限に縛られません。
エアコンはさらに別の仕組みです。電気で熱を作るのではなく、外の空気にある熱をくみ上げて室内へ運んでいる(ヒートポンプ)。運ぶだけなので、870Wの電気で3.6kWの熱を室内に置けます。
電熱式は投入した電力の約100%を熱に変えます。それでもエアコンに電気代で勝てないのは、エアコンが熱を作っていないからです。作る仕組みの上限は100%ですが、運ぶ仕組みはそれを超えられます。効率という同じ言葉でも、指しているものが違います。
- 消費電力1,000Wを超える暖房器具は、壁のコンセントに直接挿すのが原則です
- たこ足配線や、定格の小さい・古い延長コードは発熱・発火の原因になります
- 同じ回路で電子レンジなど大きな電気を使う家電と重ねると、ブレーカーが落ちることがあります(差込口の1,500Wとは別の話です)
なお、電気ヒーターに暖房の畳数が書かれないのは、電気暖房機には統一された暖房畳数の表示基準が無いことが大きいと考えられます。エアコンや石油暖房機には畳数を表示するルールがありますが、電気暖房機にはそれに当たるものが見当たりません。
電気代を同じものさしで比べる
能力の差が分かったところで、電気代も見ておきます。ここでは家電公正取引協議会が定める目安単価、31円/kWh(令和4年7月22日改定)で計算します。
- 電気ヒーター(温風1,400W):1時間あたり約43円。出る熱は約1.4kW
- エアコン10畳用(870W):1時間あたり約27円。出る熱は3.6kW
- 同じ1.4kWの熱をエアコンで作るなら、単純計算で約340W=約11円(筆者の概算)
最後の1行は、エアコンの定格値(870Wで3.6kW)から比率で割り戻した概算です。定格時の効率がそのまま続くと仮定した外挿で、実際の消費電力は外気温・部屋の断熱・運転の強さで大きく動きます。目安として見てください。
仕様表に「1時間あたり◯円」と書いてある場合、その金額はそのカタログが作られた年の目安単価で計算されています。目安単価は令和4年7月22日に27円/kWhから31円/kWhへ改定されましたが、それ以前のモデルの仕様表は27円のまま残っていることがあります。発売年の違う機種どうしで、カタログの電気代の金額を直接比べてはいけません。比べるなら、消費電力(W)から自分で計算し直すのが確実です。
なお31円/kWhも、あくまでカタログ計算用の共通のものさしです。実際の単価は契約と地域で幅があるので、自分の請求書の金額とは一致しません。
買ってから「思ったより暖かくない」となる前に
ここまで「主暖房にならない」と書いてきましたが、補助暖房として見ると評価は変わります。むしろ、この手の製品はそこを狙って作られています。用途から逆に引いてみます。
| 使う場所・目的 | 向いているもの | 理由 |
|---|---|---|
| 脱衣所・洗面所・トイレ | 電気ヒーター(1,200W前後) | 短時間で立ち上がり、換気が要らない。エアコンを付けられない場所 |
| デスクの足元・書斎 | 電気ヒーター・パネル型 | 人のいる範囲だけ暖めれば足りる |
| 寝室(6畳前後) | エアコン、またはオイルヒーター | 音と乾燥を嫌うならオイル、電気代を抑えるならエアコン |
| リビング(10畳以上) | エアコンが主役+補助 | 電気ヒーター単独では能力が1桁足りない |
| 寒冷地・立ち上がり重視 | 石油ファンヒーター | 外気温が下がっても能力が落ちない。給油と換気は必要 |
それぞれの弱点も書いておきます
片側にだけ厳しい比較は役に立たないので、エアコンの弱いところも並べます。
- 部屋全体が暖まらない(能力が1.4kW前後)
- 連続で使うと電気代がエアコンより高くなりやすい
- 機種によっては交換フィルターの費用がかかる
- 風量を上げると動作音が気になる
- 立ち上がりが遅く、足元が暖まりにくい
- 霜取り運転の間は暖房が止まる
- 外気温が下がると能力も効率も落ちる
- 脱衣所やトイレには基本的に付けられない
暖まらないって声、たぶん壊れてるんじゃなくて置き場所の問題なんですよね。
主役で買うのか、脇役で買うのか。そこを先に決めればいいんだ。
よくある質問
- 電気ヒーターだけで冬を越せますか?
-
部屋の広さによります。脱衣所や書斎のような数畳の空間なら足りますが、リビング全体を暖める主暖房としては能力が足りません。エアコンや石油ファンヒーターと併用する前提で考えてください。
- 消費電力が大きいほど暖かいということですか?
-
部屋に入る熱の総量で言えば、電気ヒーターに限ってはそのとおりです。ただし同じ1,200Wでも、遠赤外線のスポット型と対流型では体感がまったく違います。総量は同じでも、感じ方は方式で変わります。エアコンにはこの見方は通用しません。
- 補助暖房として買うなら、何W級を選べばいいですか?
-
目安として、脱衣所や足元のスポット用途なら600〜1,200W級で足ります。1,200Wを超えると壁のコンセントに直挿しが必須になり、他の家電との同時使用も気にする必要が出てきます。広い部屋を暖めたいという理由でW数を上げても、1.5kWの天井までしか伸びません。その場合はタイプごと見直すほうが早いです。
- オイルヒーターも同じ天井がありますか?
-
あります。オイルヒーターも電熱式なので、普通のコンセントで使う以上は同じ上限です。立ち上がりが遅いのは、本体のオイルと金属に熱を貯めてから放熱するためで、最終的に出る熱の総量は同じです。
まとめ:カタログで見る3つのポイント
暖房器具のカタログを開いたら、この3つを確認すれば、主暖房として使えるかどうかが判断できます。
- 暖房の力(kW)が書いてあるか。無ければ、主暖房としての畳数の表示基準が無いタイプ=補助暖房と考える
- 書いてある畳数が、何の畳数か。空気清浄や加湿の畳数を、暖房の畳数と読まない
- kW ÷ W を電卓で叩く。1に近ければ電気式。3や4になればヒートポンプ(エアコン)で、同じ電気代でも入る熱がまるで違う
売れ筋の順位は毎週変わりますが、この3つの見方は何年でも使えます。暖房を買い替えるたびに思い出してもらえれば十分です。
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