巾木(はばき)に小さな傷を見つけたとき、自分で直していいものか、直さずそのままにしておくべきか、迷うことがあります。とくに賃貸だと、下手に手を加えるとかえって退去費用がかさむのでは、という不安もあります。
結論から言うと、判断材料になるのは国土交通省が出している原状回復のガイドラインです。ただし、このガイドラインを実際に確認すると、ひとつ見落としやすい点があります。
国交省の資料には、借主の負担割合を計算するための耐用年数表が載っていますが、この表には「巾木」という項目そのものがありません。この記事は、その事実を踏まえたうえで、巾木の傷とどう向き合うかを整理したものです。
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巾木(幅木)とは何か、まず素材を見分ける
巾木は、壁の最下部と床の境目に取り付けられた部材で、掃除機や家具がぶつかる衝撃から壁を守る役目があります。傷の直し方は素材によって変わるため、まずは自宅の巾木がどれにあたるかを確かめます。
| 素材 | 見分け方の目安 | 傷の直しやすさ |
|---|---|---|
| 木製(無垢材) | 木目に立体感があり、木口(切り口)に年輪が見える | 研磨・再塗装で目立たなくできることが多い |
| MDF(繊維板+木目シート) | 表面は木目調だが均一で、切り口は繊維質 | 深い傷は同色の補修シートやパテで部分補修 |
| ソフト巾木(塩化ビニル) | 薄く、表面を押すとわずかに弾力がある | 部分的な交換や補修テープで対応しやすい |
断面(木口)が見えている場所があれば、そこを見るのが早道です。年輪や木目の繊維がそのまま見えれば木製、均一な繊維の断面ならMDF、薄い樹脂の断面ならソフト巾木です。
「自分で直していい傷」かは、原状回復ガイドラインの考え方が判断材料になる
賃貸に住んでいる場合、直す前に確認したいのが国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。退去時に借主が費用を負担すべき傷かどうか、一般的な考え方が示されています。
ガイドラインは、傷や汚れの発生原因を大きく3つに区分しています。
A:通常の住まい方をしていても発生すると考えられるもの → 原則、借主の原状回復義務なし(貸主負担)
B:住まい方・使い方次第で発生したりしなかったりするもの(明らかに通常の使用を超えるもの)→ 借主に原状回復義務あり
A(+B):基本的にはAだが、その後の手入れの悪さで損耗が拡大したもの → 借主に原状回復義務あり
出典:国土交通省住宅局参事官「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に関する参考資料」(令和5年3月)
国交省の耐用年数表に「巾木」という項目は無い
ガイドラインには、借主の負担割合を計算するための耐用年数表が載っています。まず、そこに何が載っているかを確認します。
- 壁(クロス)=6年
- 建具(襖・柱)=経過年数を考慮しない(考慮する場合は建物の耐用年数から算定)
- 流し台=5年
- 非金属家具(たんす・戸棚等)=8年
- 便器・洗面台・ユニットバス・下駄箱等=6年
- フローリング=経過年数を考慮せず㎡単位で算定(全体を張り替える場合のみ建物の耐用年数を用いる)
- 畳表・畳床・カーペット・クッションフロア=経過年数の考え方になじまないため考慮しない
国土交通省住宅局参事官が作成した参考資料(令和5年3月)を確認しましたが、巾木・幅木を名指しした耐用年数の記載は見当たりませんでした(2026年9月確認)。
実務では、巾木を壁(クロス)の付属部材として扱ったり、建具に準じて扱ったりする例があるようですが、これは国が定めた統一基準ではありません。
退去時に巾木の傷を指摘されたら、まずは「その負担割合はガイドラインのどの区分・どの耐用年数に基づく計算か」を管理会社に確認するのが、遠回りに見えて確実な進め方です。
素材別・症状別の直し方
ここからは、借主負担になりそうにない小さな傷、または持ち家で気兼ねなく直したい場合の、素材別の直し方の目安です。
傷の深さを確認する
表面の色が剥げただけか、へこみや欠けがあるかを見ます。塗装の色ハゲだけであれば、次のSTEPで対応できる軽傷です。
木製・MDFの浅い傷を直す
木部用のタッチアップペン、または同系色のニスを使います。目立たない場所で試し塗りをしてから、薄く重ね塗りするのがコツです。
MDF・ソフト巾木の深い傷やへこみを直す
MDFは木工用パテで埋めてから周囲となじむように削ります。ソフト巾木は、同色の補修シートや補修テープで傷部分を覆う方法があります。
交換が必要なレベル(割れ・大きな剥がれ)
巾木は1本単位で交換できる部材です。同じ見付幅・厚みの製品を探すか、無理せず施工業者に相談します。
賃貸の場合、DIYで直す前に確認したい2点
賃貸だと、自分で直すことが必ずしも得とは限りません。DIYで手を加える前に、次の2点を確認しておきます。
- 通常の生活でついた程度の小さな傷なら、そのままにしておくほうが、ガイドラインの区分Aとして貸主負担になる可能性があります。自己流の補修が下手だと、逆に善管注意義務違反の跡と見なされるリスクもあります。
- どうしても直したい場合は、事前に管理会社へ一報し、使ってよい補修材や色味の指定が無いかを確認します。
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よくある質問
- 巾木の小さな傷は退去費用に響きますか。
-
通常の生活でついた程度の傷は、原状回復ガイドラインの区分Aに近く、借主負担にならないことが多いとされています。ただしガイドラインに法的拘束力はなく、最終的な判断は契約内容と管理会社との協議によります。
- 巾木の耐用年数は何年ですか。
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国土交通省の耐用年数表には巾木という項目が無いため、公的に定められた年数はありません(2026年9月確認)。壁のクロスは6年、非金属家具は8年などと定められているため、実務ではこれらに準じて扱われることがあります。
まとめ
まず素材(木製・MDF・ソフト巾木)を見分け、次に自分の生活でつく程度の傷かどうかを考えます。賃貸で判断に迷ったら、国が定めた耐用年数表に巾木という項目が無いことを踏まえたうえで、管理会社に負担割合の根拠を確認するのが確実です。

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